学院の考え方
2012年5月より名誉 学院長に帯津良一先生が就任されました。
PROFILE----
医学博士、帯津三敬病院名誉院長
日本ホリスティック医学協会会長
日本ホメオパシー医学会理事長
いのちの森文化財団理事
水輪の会特別顧問、東京大学医学部卒業
元東京大学医学部第三外科医局長
元都立駒込病院外科医長
1936年 | 埼玉県生まれ |
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1961年〜 | 東京大学医学部卒業 東京大学第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院勤務 |
1982年〜 | 埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立し、院長となる 現在は名誉院長 |
『一病あっても、ぼちぼち元気』(PHP研究所)
『生きる勇気、死ぬ元気』(平凡社/五木寛之共著)
『ホリスティック養生訓』(春秋社)
『養生という生き方』(ジェイティビィパブリッシング)
『ホリスティック医学入門 ―ガン治療に残された無限の可能性』(角川グループパブリッシング)
『今日よりも、よい明日』(角川SSコミュニケーションズ)
『死を生きる。』(朝日新聞出版) 等多数
西洋医学に中国医学や代替療法を取り入れ、ホリスティック医学の治療法を実践していることで名高い。
現在、帯津三敬病院名誉院長を務め、医療の東西融合という新機軸を基に、ガン患者等の治療にあたる。
「人間を丸ごと捉えるのがホリスティック医療。全人的・総合的に見る医療が求められている」と語る。
医療復権のための療術
二十世紀の百年間における西洋医学の進歩には目を見張るものがあります。
外科学一つとっても、二十世紀初頭にやっと成人の鼠径ヘルニアの手術が端緒を開いたのに世紀末には臓器移植手術が花ざかりというのですから、今昔の感に耐えないとはこのことです。
しかし輝きが増せば増すほど、その影の部分も濃くなるものです。
人々の間に、医療イコール医学という錯覚が生まれ、医療の真ん中に医学がでんと居坐ってしまったのです。現在の殺伐たる医療の最大の要因はここにあります。
本来、医療と医学は別のものなのです。医療が戦いの最前線なら、医学は兵站部(ロジスティクス)なのです。医学は少し後方に控え、最前線が必要とする武器や弾薬や食糧を的確に届けることにその役割があります。
そのためにはいつも、性能のよい戦術を用意しておかなくてはなりません。性能のよい戦術とは客観性と再現性のある科学的根拠(エビデンス)に裏打ちされた治し≠フ戦術です。
一方、医療はというと、ただ戦術を並べ立てればよいというものではありません。
複数の戦術を統合して戦略に止揚してはじめて、本当の温もりある自然治癒力の高い医療が出現するのです。
戦略とは治しと癒しの統合です。治しが身体の一部に生じた故障を修理することなら、癒しは生命力の向上を計ることです。
生命力とは生命に自然治癒力の加わったもの。
生命についても自然治癒力についても、いまだ科学がこれらを十分に解明してはいません。
科学が解明している世界を対象とする癒しの術が、エビデンスに乏しいのは仕方のないことなのです。
手にしたエビデンスは大いに活用させていただくとして、エビデンスの不足分は直感で補えばよいのです。
さらに、この直感は一般の、あるとき脈絡もなくひらめくというものではなく、より思考に近い、ベルクソンの哲学的直感とかクランゼヴィッツの戦略的直感です。
左脳がエビデンスを、右脳が直感を司るように、私たちはエビデンスと直感を統合することによって生を全うしているのです。
医療も、その生を全うする上での一つの領域にはちがいありません。
当然のことながら医療もエビデンスと直感の統合の上に成り立っているのです。
療術とは、これまで癒しの方法の一つと考えて来ました。
戦略の片棒を担ぎ、医療の一翼を担うのですから、それはそれで存在意義は十分にあります。
しかし、この度の卒業論文を散見するところ、すでに治しと癒し、エビデンスと直感とが統合されているではありませんか。しかもきわめて個性的に。
そうです。療術とはそのままで医療そのものだったのです。
あなたがたは医療復権のための戦士なのです。
このことを大いなる誇りとしながらそれぞれの道を邁進して行って下さい。
ご健闘を祈ります。